留学体験記 – 朝枝 貴弘さん

学科 / コース:社会総合科学科 心身健康コース
留学先 / 期間:ルンド大学(スウェーデン) / 2019年8月~2020年3月

●いつごろから留学の準備を始めましたか。または意識しましたか。
大学に入学した時から留学についての説明会には参加していました。高校生の時から漠然とではありますが留学をしてみたいとは思っていました。留学を目標としたのは大学に入学した時です。

●なぜ留学先にその大学を選びましたか。
原則として交換留学では休学の必要が無く日本の所属大学の授業料を払うことで海外の大学生活を送れます。日本の大学生活の一環として留学ができるのでこのプログラムを選びました。

●留学に向けてどのような勉強をしましたか。
英会話の機会を設けるためにGlobal Lunch(留学生との昼食によって交流を行うイベント)、講義時間外に大学内で開催されている英会話への参加,留学生の友達と会話をしていました。

●留学中、現地の方や他の留学生と、どのような交流がありましたか。
イギリスから来たルームメイトと隣町のマルメに行く、授業で一緒になったオールトリア人の留学生とコペンハーゲンに行く、週2回開催される他言語での会話を行うイベントへの参加、そこで知り合ったスウェーデン人学生と誕生日会やスウェーデンのタコスを作るなどのことを行いました。また、授業ではプレゼンテーションやレポート作成などで他の学生と共同作業を行うことが1つの講座で1回はあり、発表の出し物を作るためにグループメンバーの家に集合して一緒に作業を行うこともありました。どれも遊びに出かける、会話をする、誰かの家で遊ぶ、課題をするといった日常的な経験であり普通のことをしたといえばそれまでですが今までとは育った環境が異なる人たちとこのような普通の体験が出来たということが私にとっては意外だったかもしれません。

●留学中の楽しかったエピソードを教えてください。
1つ目は料理を作り合ったことです。週2回の会話を行うイベントで知り合ったスウェーデン人学生とカレーを作りました。その後またそのスウェーデン人やその友達とスウェーデンのタコスを作りお互いの習慣を交換し喜び合えたことが楽しかったです。トルティーヤは一般的なものと違い白く、ソースにはサワークリームのようなものを塗り、辛さは日本のカレーの甘口から中辛というような感じでした。スウェーデンでは金曜日にタコスを食べる習慣があり日常生活の一部のようになっています。外国の料理が日常食となりかつ自分の国向けにアレンジされていることが日本のカレーと似ているのかもしれないと思いましたが、西アジアやタイ料理のような外国の料理が日常的に食べられているのでタコスを日本のカレーと同じように見てよいのだろうかという疑問もでてきます。結論はより調べていかないと分かりませんがこのように自分の国の習慣が非日常的になることで普段の出来事がいつもより面白く見えること、そして「味はどうだい?」「美味しい」「それはよかった」というように喜びを交換出来たことが楽しかったです。
2つ目はルームメイトと夕食を共にした後、夜まで語り合ったことです。その語り合いを通じていつも話をしているのに知らなかったその人の過去などを知り、そういう生き方もあるのかと思えたことが良かったです。

●留学中、困ったことはありましたか。
まず留学準備の段階で居住申請、住居探しに時間がかかりました。そして到着後は住居に入居するまでの移動手段と食生活に困りました。
居住申請については入力に誤りが無いかを確認する作業に時間がかかると思います。申請はオンラインで約7ステップを得た後、最終確認ボタンをもって行われるのでそれまでは大まかな入力によって申請項目の全体像を見ることをお勧めします。途中ステップにある銀行預金残高証明書などのアップロードは本物でなくてもできます。
住居探しについては授業が行われる校舎と物件との距離、家具付きか、シェアハウスか、corridor(ホテルの廊下沿いにある個室のようなもの)またはアパートか、ネット(有線or無線)はあるかといったことを確認すると決めやすくなると思います。
現地到着後はオリエンテーションが8月20日だったのに対してアパートへの入居が9月2日だったためホステルや民泊に2週間ほど泊まりました。歩きで次の宿に移動する場合、石畳の上で大型のスーツケースを揺らしながらの移動になります。また同じ大学であっても校舎と校舎の距離は遠いです。ルンドでは自転車での移動が基本となりますが生活が安定せず中古の自転車を購入できない場合は多少お金がかかってもバスを利用したほうが良いかもしれません。その場合あらかじめ公共交通機関の予約ができるアプリ(skånetrafiken)を入れておくことをお勧めします。学生の場合、市内一律約1250円/週で乗り放題の電子チケットを購入できます。
留学開始直後は日本食に合う食材を探すのにも苦労しました。米はスーパーマーケットで売っているgrötrisというものを鍋で炊くと一応日本米に近いものになります。また駅近くのアジアショップでは味噌、日本米、インスタントヌードルなどを買うことが出来ます。料理に慣れていない場合は味噌汁とご飯は作れるようにしてから現地に行くと良いかもしれません。これらの2つは日本食を食べられないことからくる身体の不具合(集中出来ないなど)を調整してくれると思います。

●留学前と後で自分自身での変化はありましたか。
レポートを上手く書けずルームメイトに助けてもらう、出かけ先で体調が優れず友達に助けてもらう、英語で言いたいことを伝えられない場面で友達に助けてもらう、など自分の力が足りず人に助けてもらえる場面に留学前よりも多く遭遇したと思います。そのことから何かを出来ない自分を少しは受け入れ、人に質問をするなど以前よりは助けを求めることに対する抵抗感がなくなったと思います。またこのような心の持ち様の変化から「色々な人に支えられて今ここにいる」といった聞き慣れた言葉に対する実感を少しは得られたと思います(行動でそれを示すのには程遠いですが)。
また、理想的な人間像を以前よりも思い描けるようになったと思います。特に印象的だったのは誰にでも同じ態度で接することの出来る友人、相手を楽しませることが好きな人、相手の主張に対して正しいか正しくないかではなく好奇心によって質問をする人の存在です。こういう生き方を自分もしたいと初めて思うことができました。

●留学で得たものは何ですか。
普通の会話をできる友人です。英語を身に着けるために関わるといったような目的が無くても繋がりを持てる関係は心の支えとして貴重なものだと思います。レポートに苦戦したり出来の悪い自分に落ち込んでいる中、彼らと話をすることでまた頑張ろうと思えることもあります。また、今でも英語はそんなに好きではありませんが彼らと話をする中で多少の英語力はついたと思います。そしてその英語を使って彼らと話をする中で知らず知らずのうちに真似ている考え方は物事に対する捉え方を少しずつ変えていたとも思います。

●留学での経験が生活にどのように影響しますか又はしていますか。
素直な疑問を持つ時間が増えたことは今の学部の勉強への取り組み方を変えたと思います。以前は英語の習得速度を上げる方法や集中力を上げる方法といった今自分が抱えている問題から生じた関心がほとんどだったため一度その問題が解決してしまえば興味を失ってしまうという虚しさを感じていました。しかし今はゼミで扱っている自分のテーマについてテーマそのものに疑問を持つようになったので関心が長続きしていると思います。

●これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします。
はじめに留学に関心がある方に向けてですが、あくまで一個人の意見として特に理由が無くても留学に興味が有ればやってみる価値はあると思います。もし今までに無い経験をしたいのであれば外国に行くことはそれを実現する手段の一つになると思います。なぜなら外国は土地も人も日本とは違うという点で今までの経験とは大きく異なるからです。ただここで注意したいのは外国に行くのにはお金や準備、特に命に関わる危険を防止するための準備が必要です。それらの準備を一人で行うことは難しいかもしれません。その反面、航空券代などを除いて通常の授業料を納めれば日本の生活費と同じぐらいの支出で比較的安全に留学が出来るこのプログラムはある意味お得かもしれません。
次に心身健康コースの方々にお伝えしますが出発前に単位交換が可能な科目を確認したところでは他コース履修10単位分、コース入門科目で4単位分でした。また、ルンド大学の1講座7.5単位は徳島大学の4単位に換算されます。2回生で留学する場合は現地で3回生に進級することとなります。もしスムーズに進級したい場合は出発前に進級要件を満たしておくことをお勧めします。そして英語の勉強は卒業要件科目の勉強や色々な手続きの合間を縫って行うことになります。留学を視野に入れている場合あらかじめそれらを見越して単位を取得しておくと良いかもしれません。私の場合、単位交換は出来ない前提で、現地で開講されている心理学の講座を追加でとる予定でしたが英語力が十分でなかったため単位交換が可能な科目のみを受講することとなりました。しかしそのような計画通りにはいかないことを差し引いても、新しい体験が出来たことのメリットは大きいと思っています。

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